通勤の困難な人の採用にあたり、在宅勤務を考えています。
在宅勤務の実例
情報機器の普及にともない、最近では在宅勤務もふえ、また自宅で業務の一部をこなしている社員が多くみられるようになりました。
こうしたなかで障害のある社員の場合には通勤が困難であったり、日常生活を送るうえで介助が必要であったりする場合に、在宅での勤務を前提として業務を担当してもらうケースが多いようです。
業務内容としては、以前はワープロ入力や編集の補助としての業務がほとんどでしたが、最近では専門的な製品の開発や、研究課題を自宅に設置したコンピュータを使って行ない、成果をあげているケースもみられます。
また、製造業や印刷業の研究開発部門などで車椅子を利用している脊椎損傷の社員が入社時から在宅勤務を前提として採用され活躍している事例も報告されています。
情報処理機器の進歩と情報ネットワークの普及によって、在宅での業務の可能性が広がっています。
障害の重度化が進むなか、厚生労働省では今後の障害者雇用を考えるうえで、さらに進んで「在宅就労」について検討しており、 インターネットなどを活用した雇用機会の拡大が課題となっていきます。
実雇用率の対象となる場合
在宅勤務者で実雇用率の対象となるのは、雇用保険の被保険者として取り扱われる常用雇用労働者に該当する人です。
在宅勤務者が雇用保険の被保険者として認められるには、一定の条件を満たしていることが必要であり、具体的には次の条件が満たされる在宅勤務者は雇用関係が明確であるとしてその対象となっています。
要件に該当するかどうかについては、最寄りの公共職業安定所に相談するとよいでしょう。
- 業務が新製品・新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計、記事の取材・編集, デザイナーなど、業務の性質上その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要性の高いものであること
- 事業主の指揮監督系統が明確であること所属事業所の通勤している労働者と同一の就業規則などが適用されること(在宅勤務者に関する特別の就業規則等を定めることも可能ですが、労働条件、福利厚生などが他の労働者とおおむね同等でなければなりません)
- 所定労働日、休日、始業・終業時刻、休憩時間などが就業規則などに明示されていること
- 各自の始業・終業時刻などの勤務実績が事業主に把握されていること・報酬のなかに月給、日給、時給など、勤務した期間または時間を基礎として算定した部分があること
- 機械・器具・原材料などの購入、事業主や顧客との通信費などについて本人の負担がないこと、または事業主の負担であること、他の事業主の業務に従事してはならないことが、雇用契約書、就業規則などに明記されているなど、請負・委託的な色彩がないこと
在宅勤務を前提とする場合には、勤務時間の規定や使用機器の入手・管理方法,通信費や光熱費の支払いなど、通常の服務規定のほかにも事業主と社員との間で取り決めをしておくべき事柄も多くあります。
勤務管理の取り決め
在宅勤務に関しては、既存の就業規則のなかに含まれていない事項の取り決めが必要です。
たとえば、勤務管理や業務報告の方法、出社時の取り扱い、在宅で使用する機器の調達や貸し出し方法、電話やファクスの通信費、光熱費の取り扱いなど、通常の勤務では必要とされない項目について事前に取り決めをしておくことが必要です。
これらの事項は、就業規則に盛り込まれていることが望ましいといえますが、対象者が限定されることや、就業規則の変更については組合との意見調整などで時間を要することから、多くは在宅勤務を開始する前に事業主と社員との間で「覚書」を交わしておく方法がとられています。
勤務時間に関しては、自己管理のため無理をし、逆に時間に対してルーズになりがちな点に考慮し、できれば通勤している社員と同じ時間帯で業務に専念できるように決めておくのもひとつの方法でしょう。
助成金の利用
なお在宅勤務で使用する機器についても障害者作業施設設置等助成金の利用が可能です。
また、個人使用として機器を購入する場合でも福祉サービスを利用できることがありますので、市町村の障害福祉課や福祉事務所に確認してください。